「バディ」は、支柱不要の自立機構・高耐久ボディ・全身フル可動の三要素を一体化した、訓練用マネキンです。狭い通路や階段など複雑な演練空間でも設営の手間を抑え、隊員は実戦に近い距離感のまま動作検証に集中できます。
外装は撥水コーティングのバリスティックナイロン、内部は高剛性フレームと高弾性クッションの三層構造。反復訓練で求められる耐久性と、安全面の配慮を両立しています。
また、全身の可動関節は「可動 → ボルト締めで角度固定」が可能。訓練シナリオに合わせて、自然な姿勢(立位・座位・伏せ・拘束姿勢など)を保持できます。
首、肩、肘、前腕回内/回外、手首、胸椎、腰椎、股関節、膝、足首、つま先の各関節が人間の動作域を滑らかに再現。可動後はボルト締めで任意角度に固定でき、特定動作の反復訓練や狭隘空間での待機姿勢設定も自在です。
これにより、射撃・格闘・投擲・搬送の使用を長期間にわたり支えます。
高荷重・高衝撃の反復を想定した耐久評価を行い、訓練用途で求められる骨格信頼性を検証しています。
身長170 cm・体重55 kg、寸法誤差±2%以内、重量バランス誤差±2%以内の精密設計。自衛隊装備(ヘルメット、防弾チョッキ、安全靴など)をそのまま装着し、実物と同様の負荷試験が可能です。
| 部位 | 自由度(軸総数) | 主な可動方向 |
| 首 | 3 |
屈曲/伸展(前後40°相当)、 側屈(左右40°)、回旋(左右60°程度) |
| 肩 | 3×2=6 |
屈曲/伸展(前160°/後30°)、 外転/内転(外180°/内20°)、回旋(内外各約90°) |
| 肘 | 1×2=2 |
屈曲/伸展(0~140°) |
| 前腕 | 1×2=2 |
回内/回外(0~90°) |
| 手首 | 2×2=4 |
屈曲/伸展(各45°)、橈屈/尺屈(各20°) |
| 胸椎(胸部) | 1 |
屈曲/伸展(約30°) |
| 腰椎 | 3 |
屈曲/伸展(約40°/10°)、側屈(左右30°) |
| 股関節 | 3×2=6 |
屈曲/伸展(前100°/後30°)、 外転/内転(外50°/内40°)、回旋(内外各約30°) |
| 膝 | 1×2=2 | 屈曲/伸展(0~120°) |
| 足首 | 2×2=4 | 背屈/底屈(各約20°)、内反/外反(各約20°) |
| つま先 | 1×2=2 | 底屈/背屈(約5°/20°) |
| 合計 | 26 | - |
HBD-0119シリーズは、補助具なしで単体自立が可能な数少ないマネキンです。これにより、自然な立ち姿勢での再現が可能になり、身体の動きの連続性を妨げることなく検証できます。また、設置や移動の作業負荷が軽減されることも、現場での運用における大きな利点です。
自立型近接戦闘マネキン・バディは、従来の固定式マネキンが抱えていた「設営工数」「支えによる動作制約」「耐久限界」といった課題を一挙に解消します。高耐久設計に基づく定量データと、現場での即応性を兼ね備えた「安全設計×実戦追求」が、部隊訓練の質を飛躍的に高める新スタンダードです。
CQB/近接戦闘演練
自立機構が支えを排除し、実戦距離感での制圧訓練を可能に。隊員は動線確認とフォースコントロールを毎回フレッシュに学習できます。
人命救助演練
瓦礫下要救助者の搬送や担架訓練で55 kgの実負荷を再現。隊員の体力評価や搬送技術の高度化を継続的に支援します。
多人数連携演習
可動関節を活かした複数名による搬送・制圧シナリオに最適。隊員間の役割分担や連携動作の高度化に寄与します。
以下は、自立型近接戦闘マネキン・バディ(HBD-0119-55K)を用いた代表的な訓練例です。現場の安全管理要領・訓練規則・指揮系統に準拠し、教官監督下で実施することを前提としています。
バディは「自立」「全身28軸の可動」「姿勢固定」「装備品装着」「実負荷(55kg)を伴う取り回し」を組み合わせることで、同一条件の反復と比較がしやすく、訓練の質と検証精度を高めます。
午後の光が傾きはじめた頃、工場地帯の外れに残る廃棄ビルは、ひと気のない静けさをまとっている。剥がれた塗膜がまだらに残る壁面、露出した配管、ひび割れたタイルの間に散った小さな破片。わずかな足音さえ反響し、隊員の呼吸のリズムが建物全体に吸い込まれていくように感じられる。廊下の角は視界が途切れ、見えるはずのない“気配”だけが先に立つ。ここで求められるのは、速度そのものではなく、距離感と連携が崩れないことだ。
訓練開始前、隊員はバディを廊下の壁際に静かに設置する。支えがないのに、バディは自然な立位姿勢のまま、その場に“人の存在”として成立する。
影が伸び、姿勢がわずかに前のめりになるだけで、空間の圧が変わる。教官は、角度固定の機構を使い、肩や腰の姿勢を「訓練で最も再現したい状態」に合わせて調整する。動かしやすさではなく、あえて“その姿勢にしか見えない”姿勢を作ることで、隊員の判断と動作が浮き彫りになるからだ。
隊員は区画を進みながら、音、影、反射、壁際の死角を一つずつ丁寧に潰していく。バディの全身可動は、人間の立ち方に近い“重心の見え方”をつくり、単なる標的ではなく、空間内の「扱うべき対象」として隊員に迫る。
接近・確保の局面では、過剰な力で一気に終わらせるのではなく、対象の姿勢変化と反動を読み、無理のない力配分で“制御する”ことが求められる。バディが姿勢を保持できるからこそ、隊員の癖(距離が近すぎる/遠すぎる、声掛けが遅れる、役割が重なる)が、反復するたび同条件で露出する。
最後は、確保から区画移動までを“同じ条件”で複数回繰り返す。映像記録を見返すと、見落としがちな小さなズレがはっきり見える。誰の一歩が早く、誰の間が空き、どの声掛けが遅れ、どこで時間が消えたのか。バディの姿勢を同一に再現できることが、評価を「印象」から「比較」に変えていく。
夜明け前、雨上がりの工場跡地には、薄い霧と冷えた空気が滞留している。かつて稼働していた設備の残骸、倒れた鉄骨、積み上がった梱包材。ぬかるみは靴底を奪い、足元を一歩誤れば身体ごと持っていかれる。救助の現場は、派手な動きよりも、地味で確実な“安全な前進”の積み重ねが支配する。バディは泥はねを受けながらも外装が水分を逃がし、触れた手が環境に引きずられない。
開始の合図と同時に、救助班はバディの位置と周囲の足場を確認する。
まずは「どこを踏めば安全か」「どこに一時仮置きできるか」を短い共有で揃え、救助の線を一本にする。バディは55kgの実負荷として、抱え上げた瞬間に“無言の主張”をしてくる。軽すぎるダミーでは出ない、腰や肩に来る現実的な圧が、隊員の姿勢と呼吸を変える。
搬送に移る前に、関節固定を使って姿勢を整える。たとえば、狭い隙間を抜けるには、肩や腰の角度を適度にまとめ、引っ掛かりや予期せぬ揺れを抑える必要がある。
バディの可動は「自由に動く」だけではなく、「狙って動かし、狙って止める」ことで、搬送動作を安定させる。搬送中は、一定の歩調で声を揃え、足場の変化に合わせて支え方を微調整していく。ぬかるみや突起物で手が滑りそうになるたびに、隊員は手袋のグリップと体重移動を確認し、急がず、しかし止まらない。
安全地帯に到達した後、教官の指示で一連の動作を振り返る。搬送時間だけでなく、声掛けの質、止まり方、再開の合図、仮置き姿勢の安定度。バディは毎回ほぼ同じ条件で扱えるため、「前回より何が改善したか」「次に何を変えるか」が議論の中心になる。ここで得られるのは、根性論ではなく、技術としての救助の積み上げだ
夕暮れの廃ビル正面は、風雨で錆びた骨組みがむき出しになり、入口の扉は重く、開閉音だけで存在を誇示する。内部は暗く、埃が舞うたびに光が筋になって浮かび、足元の小石がわずかなノイズを生む。隊員は装備を整え、互いの位置を確かめながら、静かに開始地点に立つ。ここで試されるのは、“入った後”の乱れを起こさないこと。区画の切り替え、対象の確保、移送まで、状況が変わっても連携が途切れないことだ。
教官は、バディに防弾チョッキやハーネス等を装着させ、人体と同様の位置関係でベルトやストラップが収まる状態をつくる。胸郭があることで、装備が“そこにあるべき位置”に落ち着き、隊員は装備の干渉や引っ掛かりを現実に近い条件で確認できる。
バディは自立姿勢で区画内に置かれ、隊員は状況に応じて、接近から確保へ移る。大切なのは、力で押し切るのではなく、隊員同士が同じ認識を共有し、役割を重ねず、抜けを作らないことだ。
確保後は、そのまま移送へ移る。狭い通路では、バディの関節を必要最小限の角度にまとめ、姿勢固定で揺れを抑え、隊員の足場と通路幅に合わせて運ぶ。途中で区画が変われば、声掛けでペースを合わせ、いったん止めて再配置し、再開の合図で動き出す。バディを用いることで、同じ障害、同じ角度、同じ距離を繰り返しやすくなり、改善の因果関係が見えやすくなる。
訓練後は映像記録を基に、区画切り替えのタイミング、役割分担の明確さ、装備干渉の発生箇所を確認し、次回の課題を絞り込む。「本番のように」ではなく、「本番で起きるズレを先に起こして潰す」ための訓練として、バディが機能する。
夜の訓練場は、昼間とは別の場所に見える。わずかな照明が作る影は深く、輪郭は曖昧になり、情報は減る。視界が落ちると、人は“見えるもの”より“見えないもの”に引っ張られ、判断が急ぎがちになる。そんな環境での課題は、技術以前に「識別」と「共有」だ。誰が何を見て、どう判断し、どう伝えるのか。そこでの一秒の差が、全体の乱れに繋がる。
開始前、教官はバディを複数の姿勢で配置する。立位だけでなく、座位、伏せ、物陰に身を寄せた姿勢。
全身可動と姿勢固定があるから、人体に近い“見え方”を作り分けられる。さらにこのシナリオでは、バディを「人体デコイ(疑似目標)」として扱い、無人機(ドローン)による探索・識別・追尾のシミュレーションを組み合わせる。上空から見たとき、同じ身長・同じ幅のシルエットが、姿勢一つでどう変わるのか。地上班が見ている情報と、上空から見えている情報が、どこで一致し、どこでズレるのか。そこに訓練価値がある。
ドローンの映像が共有されると、地上班は「見えているはずのものが見えない」状況に何度も直面する。バディは動かない。しかし、動かないからこそ、照明条件や角度、遮蔽物の配置の違いが、そのまま結果の差になる。
隊員は、短い報告で認識を揃え、焦りを抑え、確認の手順を統一する。地上で近づいて初めて“人体の姿勢”として成立していることに気づくケースもあれば、逆に上空の映像で先に気づき、地上班の動線を修正できるケースもある。
訓練後、ドローン映像と地上映像を並べて見返すと、思い込みの瞬間がはっきり残る。影を人と誤認した瞬間、逆に人型を見落とした瞬間、共有が遅れた瞬間。バディは繰り返し同じ姿勢を再現できるため、改善したかどうかが次回の結果に直結する。
夜間の訓練は精神論になりやすいが、バディを疑似目標として使うことで、判断の質を“比較”として残せる。
日が落ちかけた頃、訓練区画には段差、狭い開口、散乱した障害物、足場の悪い通路が連続して配置される。見た目は単純でも、55kgの対象を扱いながら通すとなると、話は別だ。隊員の身体能力だけでなく、連携と判断が問われる。強引に進めば危険が増え、慎重すぎれば動きが止まる。現場では、その両方を同時に許されない。
バディは、搬送対象としてスタート地点に置かれる。まず隊員は、どの姿勢が最も安全に移送できるかを選び、関節固定で“崩れない姿勢”を作る。狭い開口を通すなら、肩回りや脚の角度をまとめる。段差を越えるなら、持ち手の位置と重心が安定する姿勢にする。
ここで重要なのは、バディが人体に近い可動と重心を持つため、姿勢を誤ると即座に「扱いづらさ」として返ってくる点だ。つまり、現場で起きる失敗を、訓練の中で前倒しに起こせる。
途中で車両への載せ換え工程を入れると、座骨結節の価値が立ち上がる。バディはシートに“座らされる”のではなく、“座る”姿勢を作れるため、車両・二輪・各種座席に対し、人と同様の着座条件で検証できる。装備を着せた状態でも、胸郭があることでストラップの通り方や圧のかかり方が現実に近くなり、載せ換え時の引っ掛かりや干渉が、具体的な課題として見える。
ここでもバディは動かないが、動かないからこそ、隊員側の手順・声掛け・役割が結果を支配する。
ゴール地点では、タイムだけでなく、停止回数、やり直しの原因、危険動作の兆候を整理し、次回の改善点を明確にする。複合障害物の訓練は、単に「きつい」だけで終わりがちだが、バディを使うと、きつさの正体(姿勢の選び方、持ち方、声掛け、手順の統一不足)が分解され、改善できる課題として残る。
| HBD-0119-55K |
自立型近接戦闘マネキン・バディ 170cm・55kgモデル(胸郭・座骨結節) |
| HBD-0119-70K |
自立型近接戦闘マネキン・バディ 170cm・70kgモデル(胸郭・座骨結節) |
| HBD-0119-100K |
自立型近接戦闘マネキン・バディ 180cm・100kgモデル(胸郭・座骨結節) |
| HBD-0119-55KF |
自立型近接戦闘マネキン・バディ 160cm・55kg(女性)モデル(胸郭・座骨結節) |