危険体験体感教育で留意すべき点

危険体験体感教育を行う際に留意すべき点がいくつかあります。人はたとえ目の前で大きな災害が発生した場合でもそれが実際に自分自身に直接影響する事象でなかったり、最初から安全性が確保されていたりすることがわかっていたりする場合、無意識のうちに目の前の災害を無視したり(傍観者効果)危険性を十分に認識しようとしない(リスクの低評価)行動をとることがあります。

危険体験体感教育を行う上では、被研修者ひとりひとりにこうした間違った経験値を蓄積させないようにすることが重要な課題となります。危険体験体感教育は単なる座学の延長ではなく実際の現場においての危険回避シミュレーションとして行われるべきものであり、現実的かつ実際の現場で起こり得る場面を想定した内容でなければなりません。そのためには危険体験体感教育で再現される災害現場(仮想現場の設置)と災害事例(仮想災害)は実際に発生した労働災害を基に設定するのが基本です。

また、研修を行う者は自らの経験を踏まえたうえで、労働現場における危険要因を具体的に説明しながら被研修者に体感教育を行います。こうすることによって被研修者は初めて単なる災害防止のための知識の習得ではなく、危険回避行動や危険予測を自発的に行う習慣を身につけていくことができるようになります。