ヒューマンボディが提供する「高齢者ダミー」に関連して、加齢によって変化する関節可動域(Range of Motion:ROM)や筋力低下の傾向、そしてそれが日常動作や製品評価に与える影響について、科学的データに基づいた補足情報を紹介します。これにより、高齢者ダミーがどのような観点で設計されているのかをより具体的に理解していただけます。
■ 下肢の可動域の変化(20代〜70代) 複数の研究データによると、股関節・膝関節・足関節における関節の可動域は、加齢に伴い徐々に減少します。
• 男性では40代以降、女性では60代以降から明確な減少傾向が見られます。
• 特に股関節の内旋・外転・外旋では、10度以上の可動域低下が年代ごとに確認されています。
• 一方で、膝の曲げ伸ばし(屈曲)や足首の背屈などは年齢による変化が少なく、比較的安定しています。
• 性別による違いもあり、股関節内旋や足首の下方向の動き(底屈)は女性の方が大きく、股関節外旋では男性の方がやや高い傾向があります。
■ 筋力の加齢変化 加齢により、関節の可動域だけでなく、股関節・膝・足首に関する筋力も減少します。
• 特に40代以降の下肢筋力は急激に低下しやすく、膝の伸展や足首の底屈などで、若年層と高齢層では明確な差が現れます。
• これらの変化は、立ち座りや歩行時の安定性に直接関係しており、転倒リスクの要因の一つとなります。
■ 高齢女性の肩可動域 75歳前後の女性を対象にした研究では、肩の屈曲・外転・水平伸展などの動きが、若年層と比べて10〜25度程度小さくなることが報告されています。
• 特に「腕を後ろに引く」「肩より上に上げる」動作が困難になりやすく、着替えや整容などの基本動作に支障が出るケースがあります。
■ 着脱動作との関係
• 肩の外転が120度未満では、ジャケットなどの袖に腕を通す動作に時間がかかる傾向があります。
• 衣服のデザインや背幅によって着やすさが変わるため、こうした日常生活における可動域の制限もダミー設計時に考慮されています。
ヒューマンボディの高齢者ダミーは、実測データや文献をもとに「年代別の可動域特性」「男女差」「生活動作の影響」を反映した構造設計となっています。 これにより、以下のような用途に適しています:
• 転倒や動作制限リスクの検証
• 医療・介護製品(衣服・シート・車椅子等)の評価
• 福祉用具や装着機器の開発サポート
• リハビリプログラムや運動機能評価の支援
• 教育現場における高齢者身体特性の理解
加齢による関節の動きや筋力の変化は、日常動作や製品使用時の動作パターンに直結します。ヒューマンボディの高齢者ダミーは、こうした実態に基づいた設計で、研究や製品評価、教育・研修の現場において、現実的かつ効果的な活用が可能です。
屈曲(前屈)45°・伸展(後屈)30°
左回旋 30°・右回旋 30°
屈曲 20°・伸展 10°
挙上 20°・引き下げ(下制)10°
外転(側方挙上)170°・内転 50°
屈曲(前方挙上)160°・伸展(後方挙上)30°
外旋 60°
内旋 80°
左回旋 30°・右回旋 30°
屈曲(前屈)30°・伸展(後屈)30°
屈曲 140°・伸展 0°
回内 90°・回外 90°
回内 90°・回外 90°(拡大)
屈曲(掌屈)60°・伸展(背屈)60°
股関節 屈曲 100°・伸展 30°
股関節 外転 50°・内転 40°
大腿部 外旋90°
大腿部 内旋45°
屈曲 120°・伸展 0°
足首 屈曲(底屈)15°・伸展(背屈)40°
つま先 屈曲 0°・伸展 15°