ヒューマンボディ 人体ダミーと危険体感マネキン
  • HOME
  • 危険体感マネキン
  • ポージングダミー
  • レスキューマネキン
  • 人体ダミー
  • 子どもダミー
  • 実験用マネキン
  • ショールーム
  • 会社概要
  • 研究開発
  • 納入実績
  • カタログダウンロード
  • お問い合わせ

設計における代表体重の選定と今後の国際標準化動向


人の体重を「設計値」として扱う時代

現代の設計では、「代表体重(representative mass)」は単なる統計値ではなく、安全性・信頼性・国際適合性の基準として扱われます。


自動車、昇降機(エレベータ)、義肢装具、訓練用ダミーなど、人が関与する機器はすべて、この仮定体重を基に構造や強度が決定されます。

 

世界の主流は、

  • 欧州・日本:1人=75kg(ISO/EN/JIS整合)
  • 米国:1人=68kg(150lb)(FMVSS)
  • 義足:100kg級(P5)(ISO 10328)

 

という体系で運用されています。
設計者はこの差を理解し、対象市場ごとに適切な値を選択・明示する必要があります。

 


2. 分野別の代表体重と設計原則

■ 自動車分野

欧州では EU Regulation No.1230/2012 が「75kg/人(68kg+手荷物7kg)」を規定し、車両の重心位置や座席設計(R点)に反映されます。
米国の FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards) では「68kg/座席(150lb)」が依然として使用されており、国際自動車メーカーでは両基準に対応した試験を行う「デュアル適合(dual compliance)」が一般化しています。

 

■ 昇降機分野

ISO 8100-1:2019/EN 81-20:2020 では、エレベータの設計に「乗員1人=75kg」を明記。定員×75kgが定格荷重(rated load)の算出基準です。
日本の JIS A 4301 もこれに完全整合しており、世界的に見ても75kg統一が達成されています。

 

■ 義肢装具分野

 

ISO 10328:2016(下肢義足構造強度試験) では、P3〜P8の試験区分があり、一般成人はP5(100kg級)が標準です。
これは「平均体重約70kg+安全率約30%」を意味し、疲労強度・破断限界を含めた設計に適用されます。

 


3. 日本人平均体重との整合

厚生労働省「令和6年(2024年)国民健康・栄養調査」によると、
成人男性の平均体重は 67〜70kg、成人女性は 53〜56kg。


この数値を国際基準と比較すると、欧州基準75kgに対して約10〜25%軽いことがわかります。

 

 

したがって、設計時には平均値に一定の上乗せ(安全率)を行い、男性=75kg/女性=60kg前後を代表値とするのが妥当です。


これにより、国内データと国際規格の両立が図れます。


4. 国際標準化の動向

ISOおよび欧州標準化委員会(CEN)は、人体データの国際整合を進めています。
特に ISO/TC 159(人間工学) や ISO/TC 173(補装具技術) では、
各国の体格・体重データを統合した Anthropometric Big Data(アンスロポメトリック・ビッグデータ) の整備が進行中です。

 

 

このプロジェクトでは、年齢・性別・地域別の統計をAIで解析し、動的に更新される設計基準を目指しています。


将来的には、設計ソフトウェア(CAD/CAE)が最新の体重分布データを自動反映し、
「平均値ベース」から「リアルタイム適合型(adaptive mass model)」へと進化する見通しです。


5. 日本の今後の課題と方向性

日本では、国際規格との整合を意識したJIS改訂が進んでいます。
特に次の3つが重要です。

1) JIS D4604(自動車用シートベルト)
 – ダミー質量75kgを採用し、国際基準と同値化。

2) JIS A 4301(エレベータのかご及び昇降路の寸法)
 – ISO 8100-1との完全整合。

3) JIS T系列(医療・義肢装具)
 – ISO 10328試験方法の国内適用化。

 

また、産総研や大学研究機関を中心に、日本人標準体格モデル(Digital Human Model for Japan) の整備も進められています。
これにより、「ISO基準+日本データ補正」という新しい標準モデルが確立される見込みです。


6. 設計・試験・表示の統合運用

代表体重を正しく扱うためには、以下の3つの工程を一体化することが推奨されます。

  • 設計(Design):対象市場に応じて代表体重を設定(例:75kg/68kg/100kg)。
  • 試験(Testing):ISO・JIS準拠試験を実施し、条件・結果を記録。
  • 表示(Documentation):仕様書・製品ラベルに代表体重と適用規格を明記。

 

この一連の流れを明文化することで、製品の安全審査・国際認証・研究論文での引用が容易になります。


7. 将来への展望

今後、代表体重の概念は固定値から動的値へと移行していくと考えられます。
AI
が各国の健康統計を解析し、年齢・地域・性別に応じた設計条件を提案する時代が目前に迫っています。

 

今後は国際基準と日本人データの両立を重視し、透明性の高い技術情報の公開を続ける企業が多分野のダミー・義肢・試験治具を開発する鍵となるでしょう。


Glossary(用語解説)

 

用語

説明

代表体重(Representative Mass)

設計・試験で仮定する平均体重+安全率の値。

ISO(International Organization for Standardization)

国際標準化機構。世界各国の規格を統一。

EN(European Norm)

欧州規格。CEN/CENELECが制定。

FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)

米国連邦自動車安全基準。68kgを基準とする。

MDR(Medical Device Regulation)

欧州医療機器規則。義肢など医療機器の適合指針。

Anthropometric Big Data

各国の体格・体重データを統合した人間工学的データ群。

Dual Compliance(デュアルコンプライアンス)

欧州と米国の双方の基準に同時適合させる設計方式。


出典

 

  • ISO 8100-1:2019/EN 81-20:2020(乗員75kg基準)
  • EU Regulation No.1230/2012(乗員質量75kg=68kg+7kg手荷物)
  • FMVSS(Federal Register, 2023/11/13)
  • ISO 10328:2016 + Amendment 1(義足構造試験)
  • 厚生労働省「令和6年(2024年)国民健康・栄養調査」Table 2-6

作成日:2025年10月29日
Copyright (C) Avice, Inc. All Rights Reserved.

  • 技術開発の歴史と製品化
  • 人体ダミー開発の理念と実績
  • 高精度人体ダミーの活用事例
  • 日本人の平均体重と設計基準値の最新動向
    • JISと国際基準に見る「一人当たり体重」比較と設計への反映
    • 義肢装具における設計代表体重と ISO 10328 適合基準
    • 自動車・昇降機における乗員質量の国際比較(68kg vs 75kg)
    • 設計における代表体重の選定と今後の国際標準化動向
お問い合わせ

危険体感マネキン

身長170センチ、体重約70キロの危険体感マネキンは、人体の動きをリアルに再現する設計が施されています。このマネキンを使用した高所からの墜落実験では、安全帯を装着した状態での挙動を再現し、研修受講者に墜落時の衝撃や危険性を体感していただけます。このデモンストレーションにより、危険体感研修の現場でリアルな状況を再現し、安全対策の重要性を学ぶことが可能です。

お知らせ

株式会社アヴィス

茨城県つくば市花畑3-20-5 D101

お電話でのお問い合わせ

029-846-1176

営業時間:平日9:00~17:00

概要 | プライバシーポリシー | サイトマップ
Copyright(C)Avice,Inc. All Rights Reserved.
ログイン ログアウト | 編集
  • HOME
  • 危険体感マネキン
    • イベント動画アーカイブ
    • 墜落転落衝撃体感マネキン
      • 墜落・転落衝撃体感マネキン 170cm・70kg (HBD-0114-70K)(全方向)
      • 墜落・転落衝撃体感マネキン 180cm・130kg (HBD-0114-130K)(全方向)
      • ウエイトベスト 30kg (HBD-0114-30-VEST)
      • 墜落・転落衝撃体感マネキン 170cm・70kg (HBD-0101-70K-RF)(後方落下)
      • 墜落・転落衝撃体感マネキン 170cm・70kg (HBD-0102-70K-FF)(前方落下)
      • 危険体感マネキンの柔軟性
      • 危険体感マネキンの取り扱い方
    • 挟まれ・激突衝撃体感
      • 挟まれ・激突衝撃体感マネキン(HBD-0116-55K)
    • 巻き込まれ衝撃体感
      • 巻き込まれ衝撃体感マネキン (HBD-0118-00)
    • 飛来・落下衝撃体感
      • 飛来・落下衝撃体感 頭部モデル (HBD-0114-HEAD)
    • 危険体感マネキンオプション
      • 墜落衝撃吸収マット(二つ折)
      • 墜落衝撃吸収マット
      • 安全防護パッド
    • 危険体感教育とは(参考資料)
      • 危険体感とは
      • 実演方法・事例紹介
      • 教育実施時の注意点
      • 第14次労働災害防止計画について
      • 危険体感教育ガイド
      • 危険予知訓練(KYT)とは?
      • 安全帯性能評価ガイド
      • ワイヤ破断リスク訓練
      • 重機挟み込み・轢過シミュレーション
      • 不安全行動発見トレーニング
      • 救助・応急搬送訓練
      • 墜落制止用器具の使い方
      • シナリオ組み立てのステップ
    • 危険体感マネキンFAQ
  • ポージングダミー
  • レスキューマネキン
    • 陸上救助訓練用レスキューマネキン
      • レスキューマネキン・165cm
      • レスキューマネキン・177cm
      • レスキューマネキン・116cm
    • 水難救助訓練用レスキューマネキン
      • 成人水難救助マネキン
      • 子ども水難救助マネキン
  • 人体ダミー
    • ポジショニングダミー
      • ポジショニングダミー ヒューマンライク(HBD-0205-H70K)
      • ポジショニングダミー二輪乗車用(HBD-0205-H70K-BR)
      • ポジショニングダミー 耐久モデル(HBD-0205-D70K)
    • 事故再現ダミー
      • 事故再現ダミー 成人(HBD-0117-55K)
      • 事故再現ダミー 子ども(HBD-0117-26K)
    • ヒューマンライクダミー
    • ヒューマノイドダミー
    • 高齢者ダミー人形
      • 高齢者ダミー人形(可動域解説)
    • 特注品
      • 自立型近接戦闘マネキン・バディ
  • 子どもダミー
    • 子どもダミー人形
      • 新生児ダミー
      • 耐久モデル
      • ヒューマンライクモデル
    • 自転車用幼児座席評価用子どもダミー人形
      • ヒューマンライクモデル
      • 耐久モデル
      • 耐久モデル2分解型
    • 子どもの肺活量と最大換気量の科学
      • 肺活量(VC:Vital Capacity)とは
      • 最大換気量(MVV:Maximum Voluntary Ventilation)とは
      • 1950年代の研究
  • 実験用マネキン
    • ベーシックダミーF型
    • 子どもソフトボディ
    • 成人ソフトボディ
    • フレキドール
    • ユニバーサルジョイントマネキン
  • ショールーム
  • 会社概要
  • 研究開発
    • 技術開発の歴史と製品化
    • 人体ダミー開発の理念と実績
    • 高精度人体ダミーの活用事例
    • 日本人の平均体重と設計基準値の最新動向
      • JISと国際基準に見る「一人当たり体重」比較と設計への反映
      • 義肢装具における設計代表体重と ISO 10328 適合基準
      • 自動車・昇降機における乗員質量の国際比較(68kg vs 75kg)
      • 設計における代表体重の選定と今後の国際標準化動向
  • 納入実績
  • カタログダウンロード
  • お問い合わせ
  • トップへ戻る
閉じる