危険予知訓練(KYT: Kiken Yochi Training)は、作業前にチームで潜む危険を洗い出し、具体的な対策を共有・実行する安全活動です。中央労働災害防止協会が提唱するこの手法は、単なる座学を超えて現場に即したリスク低減を目指します。
第1ラウンド(現状把握)
危険体感マネキンやイラストを用い、現場のあらゆるリスクを洗い出す。
第2ラウンド(本質追究)
洗い出したリスクの中から“なぜ危険か”を深掘りし、根本原因を特定。
第3ラウンド(対策樹立)
特定した危険ごとに、現実的かつ効果的な予防策を一件ずつ提案・評価。
第4ラウンド(目標設定)
合意した対策を「いつ」「誰が」「どのように」実施するか具体化し、フォローアップ計画を策定。
各ラウンドの詳細は以下の表をご覧ください。
ラウンド | 主な手順 | ねらい |
第1 | 現状把握 | マネキン演習+意見出し 全リスクの可視化 |
第2 | 本質追究 | 危険要因の深掘り 根本的危険因子の明確化 |
第3 | 対策樹立 | 各自の対策提案 → グループ評価 実行可能な安全策の選定 |
第4 | 目標設定 | 対策の実施計画・評価指標の設定 継続的改善を可能にする目標 |
準備物:危険体感マネキン、イラストシート、現場写真
ステップ
チームでリスクを挙げる(量を優先)
ホワイトボードに一覧化
ポイント:忌憚ない意見出し※1を促し、多様な視点を集約
選定:最重要リスクをグループで1つ選ぶ
深掘り:「なぜ危険か」「どのように発生するか」を問い続ける
リスクシナリオを具体化
ポイント:互いの認識をすり合わせ、見落としを防止※2
提案:各自が具体策を3つ以上挙げる
評価:有効性・コスト・時間で絞り込み
具体化:必要機材・担当者・実施時期の明文化
ポイント:実行可能性と効果の両立を重視※3
合意形成:対策を「WHO・WHEN・HOW」で記載
評価基準:量的(件数減少率)および質的(理解度向上)
フォローアップ:定期点検日程と責任者を設定
ポイント:SMART目標設定※4で具体性を担保
リアルな危険可視化
実際の人間と同等の重量・動きで「危険を立体的に理解」でき、イメージのズレを最小化。
学習定着率向上
視覚・触覚を刺激する体験学習は、座学のみの研修に比べて記憶に残りやすく、定着率を30~50%向上。
チームワーク強化
複数人で演習に参加することで、コミュニケーションが活発化し、共同で安全策を検討する協働体験を提供。
リスク評価の精度向上
多様なシナリオを再現し、実際の設備・環境条件とのギャップを検証。対策効果を事前に定量的に把握可能。
教育時間の効率化
体感演習を中心に据えることで、一回あたりの研修時間を短縮しつつも、高い学習効果を保持。
コスト削減
外部講師や外部施設利用の頻度を抑え、自社で繰り返し使用できるため長期的な研修コストを20~30%低減。
法令遵守の確実化
フルハーネス義務化や特別教育必須項目を「実技演習」で網羅。研修記録も整備しやすく、監督署対応力を強化。
カスタマイズ性
模擬足場、クレーン、巻き込み機構など多彩な演習パッケージを組み合わせ、業界・職種ごとの特有リスクに最適化。
安全文化の醸成
定期的に体感演習を実施することで、「危険予知」が日常業務に根付く安全風土を構築。
データドリブン分析
高速度カメラやウェアラブルデバイスとの連携で、体感演習の効果を数値化し、研修プログラムを科学的に改善可能。
役割分担:司会・記録を明確にし、進行と記録を両立
時間管理:各ラウンド15~20分を目安にテンポ良く
振り返り:録画やメモを活用し、学びを可視化
定期実施:月1回以上のKYTで安全意識を定着
※1 忌憚ない意見出し:遠慮なく思ったことを自由に発言すること。
※2 認識すり合わせ:参加者間で危険への理解度を一致させるプロセス。
※3 実行可能性:提案した対策が現場で実際に実施できるかどうかの適応度。
※4 SMART目標:Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限付き)の頭文字。