本ページでは、危険体感マネキンを使って安全帯(墜落制止用器具)やフルハーネスの制止性能を可視化・定量化する方法を解説します。JIS T8165:2018およびANSI/ASSP Z359.11-2021の最新規格に則った試験手順を中心に、実践的なデモンストレーション例を豊富にご紹介します。
JIS T8165:2018(墜落制止用器具-フルハーネス型)
フルハーネスは「肩、腿、胴部のストラップで荷重を多点支持し落下時の衝撃を分散する構造」を定義
ANSI/ASSP Z359.11-2021(Full Body Harnesses)
米国ANSIが定めるフルボディハーネスの試験方法・許容荷重・性能要件を規定。上腿、腰、胸、肩で荷重配分を行うことを要件としています。
項目 | 内容 |
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落下高さ | 最低 2.2m ※必須 ※1 |
危険体感マネキンモデル | HBD-0114-70K(170㎝・70kg)または130kgモデル |
接続点 | 背面 D 環(一次荷重)、胸部 D 環(二次荷重) |
衝撃吸収マット | 40mm厚/重畳時80–120mm厚 EVA フォーム |
測定項目 | ●最大落下距離(L / H 比) ●揺れ幅 ●荷重値およびストラップ伸長 |
設置場所:天井梁または強固なフレームに2.2m以上の吊り下げクリアランスを確保
アンカリング:定格荷重 15 kN 以上のアンカーボルトとプレートで固定
マネキン装着:専門スタッフがハーネスをマネキンに正しく装着・テンションチェック
安全ゾーン:落下半径 3 m 以上に立ち入り禁止エリアを設定
ハーネス背面 D 環をスリングでアンカーに接続
マネキンを手動またはガイドレール付き装置で 2.2 m 以上から自由落下
落下後のストラップ伸長・揺れ挙動・衝撃吸収マットの効果を高速度カメラで撮影
撮影映像をスロー再生し、ハーネスの制止動作とダンピング特性を受講者に解説
最大落下距離(L/H 比)
JIS では落下距離 ≤ 1.8 H(H=ストラップ長)をクリア要求
揺れ幅(リバウンド)
落下後の横・前後方向の振れ幅を計測し、安全帯の減衰性能を評価
ストラップ伸長
落下前後のストラップ長変化を定量し、過伸長による二次事故リスクを確認
衝撃吸収マットの影響
マット厚別(40 mm vs. 120 mm)での衝撃緩和効果を比較検証
定期点検:ANSI では最大 12 ヶ月ごとの機能試験を推奨(Z359.11-2021)
教育連携:KYT や高所作業特別教育に組み込み、座学と体感演習をハイブリッドで実施
記録管理:落下テスト結果を数値化し、社内安全管理資料として蓄積
複数モデル比較:70kg vs. 130kg モデルを併用し、多様な体型・重量条件での安全帯適合性を確認
建設業 A 社:労働災害削減プロジェクトの一環で定期テストを実施。落下挙動の可視化により、安全帯不良品の早期発見率が 95% 向上。
製造業 B 社:新入社員研修に導入し、座学のみの研修と比較して着用ミス率が 60% 減少。
インフラ C 社:高所点検チームで複数モデルの比較テストを実施し、最適機種選定と保守プラン設計に活用。
Q1. マネキン以外の荷重モデルは使用できますか?
A1. ISO 10333-1 準拠の荷重ブロック(100 kg、130 kg)でも代替可能ですが、体感挙動はマネキンが最適です。
Q2. 試験機器がない場合の代替策は?
A2. 簡易ガイドレール+ハンドウィンチで一定速度落下を再現し、動画解析で揺れ幅を測定できます。
JIS T8165:2018 “墜落制止用器具”—日本産業規格
ANSI/ASSP Z359.11-2021 “Full Body Harnesses”—ASSP 標準
OSHA 29 CFR 1910.140—Employer Requirements for Personal Fall Arrest Systems
中央労働災害防止協会 “高所作業安全ガイドライン”