墜落制止用器具※1 は高所作業中の墜落事故を防止するための必須装備です。ここでは、法令・規格に基づく種類・選定基準から、正しい装着手順、日常点検・交換タイミング、Q&Aまでを網羅解説します。危険体感マネキンを使ったデモ例も併せてご紹介します。
フルハーネス型
肩・腿・胴部を多点で支持し、落下時の荷重を全身に分散する形状が原則 ※2
胴ベルト型
体高が6.75m以下の足場や開口部で使用可能。ただし原則はフルハーネス型
法令根拠:
労働安全衛生法施行令改正(平成30年政令第184号)および厚生労働省令第75号で用具の種類・使用条件が定められました。
使用高さによる区分
6.75m超:フルハーネス型必須
6.75m以下:胴ベルト型も可(安全マージン確保が前提)
使用可能質量
着用者体重+装備品重量の合計を機器表示で確認
ショックアブソーバの種別
フック位置が腰以上:第一種
足元:第二種(足場作業用)※3
安全率(ANSI/ASSP Z359.11)
スリング・ランヤードは破断荷重÷使用荷重 ≥4.0
サイズ選定:胸囲・腿囲に合ったハーネスを選ぶ。
装着順序:肩→胴→腿の順でストラップを通し、ハーネスがねじれないよう注意。
テンションチェック:ストラップに拳1枚分の隙間がないことを確認し、軽くジャンプして位置ズレを防止。
D環位置確認:背中中央のD環が肩甲骨の間に来るよう調整。
最終点検:専門スタッフがバックル・ストラップ・D環の緩みを二重チェック。
U字つり禁止:胴ベルトに体重を預けるU字つりは違法かつ危険です。ワークポジショニング器具を使用してください。
フックの保管:ランヤード未使用時は休止フック掛けや収納袋へ確実に収納。
急動作禁止:巻取式ランヤード装着中の走行・跳躍はロック機構作動で事故誘発の恐れあり。
化学・高温環境:火花や薬品、高熱物体との接触を避けること。
日常点検:ランヤード部は毎日、バックル・金具は月1回を目安に目視点検。
定期点検:半年以内に機能試験(耐荷重・動作試験)を実施し、記録を保存。
交換基準:
フルハーネス本体:3年
ランヤード・ショックアブソーバ:2年または重大損傷時。
異常発見時は即廃棄し、新品へ交換。
Q1. 型式証明は必要ですか?
A1. 墜落制止用器具は自己認証品のため型式証明は不要ですが、製造業者による品質管理・検査の適正実施が要件です。
Q2. 特別教育は誰が実施?
A2. 法令で講師資格は規定されませんが、十分な知識・経験を有する者が行う必要があります。事業者実施も委託も可。
Q3. 胴ベルト型は2022年以降も使えますか?
A3. 6.75m以下の特定条件下でのみ使用可能。2022年1月1日以降はフルハーネス型が原則です。
各シーンで、実際に危険体感マネキンを使ったデモンストレーションを行うことで、安全帯性能や装着手順の重要性を“リアルに”“体感的に”伝えられます。
公開安全展イベント
会場中央に足場モックアップを設置し、来場者にハーネス着用済みマネキンの落下デモを披露
落下距離・揺れ幅を大型モニターにスロー再生で映し出し、正着用と緩着用の違いを比較
社内安全週間ワークショップ
2m以上の昇降式台車を使ったマネキンドロップテスト
設定重量(70kg/100kgモデル)で複数回繰り返し、劣化ランヤードの挙動比較
高所作業特別教育プログラム
フルハーネス・ランヤードの装着実演に続き、即座にマネキンを吊り下げて制止性能を体感
受講者は安全距離から観察し、テンションチェックミスの危険性を視覚的に学習
建築現場定期訓練
実物足場を利用し、危険体感マネキンを吊り下げての落下救出デモ
危険体感マネキンを宙づりにした後、受講者が地上から安全な方法で降ろす手順を実践
メーカー開発評価会
新型ショックアブソーバ付きハーネスの性能比較試験
80mmと120mmマットでの落下緩衝効果をビデオ解析し、数値データとともに発表
屋外点検シミュレーション
クレーンアームからのマネキン吊りテストで、屋外風速・温度条件下での使用適性を確認
悪天候想定(風速5m/s級)での揺れ制御性能デモ
緊急対応訓練連携
フルハーネス解除後、担架への移乗・搬送までを一貫して行う複合デモ
危険体感マネキンを“負傷者”と見立て、初期救護から医療搬送までの手順を演習
医療従事者向け合同訓練
消防隊や救急救命士と共催し、危険体感マネキンを使った高所負傷者の降下搬送演習
緊急停止装置・ロープブレーキを併用した“コンビ演習”で連携プレーを強化
※1 墜落制止用器具:労働安全衛生法で定められた、墜落事故を防止・制止するための装置。
※2 フルハーネス原則化:高所作業(2m以上)での胴ベルト型使用制限は法令で定められています。
※3 ショックアブソーバ種別:第一種は腰掛け型作業用、第二種は足元作業用で選択基準が異なります。