肺活量とは、「どれだけ深く息を吸い込み、どれだけ完全に吐き出せるか」を示す、呼吸機能の代表的な指標である。
英語では Vital Capacity(ヴァイタル・キャパシティ)
と呼ばれ、「生命(Vital)を支える容量(Capacity)」という意味を持つ。
つまり肺活量とは、人間が生命活動を維持するための“呼吸力の総合値”である。
肺活量の測定は「スパイロメトリー(Spirometry)」という検査法によって行われる。
測定者はスパイロメーターのマウスピースをくわえ、
このとき吐き出された空気の量が「肺活量(VC)」である。
最新の電子スパイロメーターでは、わずか数秒で肺活量、1秒量(FEV₁)、呼気速度などを高精度で測定できる。
データは自動的に保存・解析され、成長曲線との比較も容易になっている。
肺活量は、以下の3つの要素の合計で構成される。
これらの合計が「肺活量(VC)」であり、
肺や呼吸筋がどれだけ柔軟か、どれだけ効率的に空気を動かせるかを表す。
学童期では呼吸筋の発達が進み、特に予備吸気量と予備呼気量が急速に増加する。
これが、身長や体重の成長と並行して肺活量が伸びる主な理由である。
肺活量は年齢とともに増加し、特に6〜12歳の間に急上昇する。
この時期は胸郭が拡張し、肋骨の角度が成人型に近づくため、
肺の容積が広がり、空気の出し入れが容易になる。
研究では、身長1 cmの増加につき肺活量は約25〜30 mL増えるという傾向が確認されている。
このため、評価には年齢だけでなく体表面積(BSA:Body Surface Area)による補正が重要である。
Figure 1 に示すように、体格の拡大に伴い肺活量(mL/m²)は線形的に増加する。
男子は女子よりもやや高い傾向を示し、これは胸郭の形状と筋量の違いによるものとされる。
肺活量は、単なる体格だけでなく姿勢や呼吸習慣にも大きく影響を受ける。
背中を丸めた猫背姿勢では横隔膜が十分に下がらず、肺の拡張が制限される。
一方、背筋を伸ばして深呼吸を行うと、胸郭全体が上下に広がり、
肺に取り込める空気量が大幅に増加する。
また、定期的に運動を行う子どもほど、呼吸筋が強く柔軟であることが多い。
有酸素運動(ランニング、縄跳び、水泳など)は肺活量を増加させ、
呼吸のリズムを安定させる効果がある。
弊社では、教育用ダミー開発において胸郭・横隔膜の動きを再現する際、
これらの姿勢変化による呼吸効率の違いを解析データとして活用している。
肺活量の発達を評価する際は、「予測値」との比較が重要である。
国際的には GLI-2012(Global Lung
Initiative 2012) が標準として用いられており、
年齢・性別・身長をもとに理論的な基準値を算出する。
測定値と予測値との差は zスコア(z-score) で表され、
平均値がz=0、−1.64以下で「低下」と判断される。
日本ではTakaseら(2013)の国内基準式もあり、
GLI基準と併用することで、学童の肺発達をより精密に評価できる。
このような国際基準の導入は、研究者だけでなく教育現場にも重要である。
標準化された測定によって、地域や時代を超えて比較可能な呼吸データが蓄積されていく。
肺活量の伸びにはいくつかの制約要因がある。
Glossary(用語解説)
出典・参考
Abstract
Title: Vital Capacity in School-Age Children — Growth, Measurement, and Functional Implications
Vital Capacity (VC) represents the total amount of air that can be exhaled after a maximal inhalation.
It reflects the structural and muscular development of the lungs and thorax, serving as a key parameter of respiratory health.
During the school-age years (6–12), VC increases rapidly due to expansion of the rib cage, maturation of the diaphragm, and improvements in respiratory coordination.
Studies indicate a strong correlation between VC and body size, approximately 25–30 mL per 1 cm of height increase.
The use of standardized measurements such as spirometry and GLI-2012 reference equations allows for accurate, cross-regional comparison of pediatric lung
development.
Posture, physical activity, and environmental exposure further modulate VC.
At Avice, Inc., these physiological insights are incorporated into the design of Human-Like Dummies, which reproduce children’s thoracic motion and ventilatory capacity for educational and
safety research.
By connecting classical physiology with modern data analytics, this integrated approach clarifies how breathing capacity mirrors growth, adaptation, and overall health in children.
作成日:2025年10月29日
Copyright (C) Avice, Inc. All Rights Reserved.