危険体感とは

体感記憶とは視覚や聴覚、触覚などからの刺激の情報が統合され、一つのまとまった情報として記憶されることです。そして危険体感とは、実際の災害現場で発生した事象(情報)を疑似的に再現し、被研修者に統合的に記憶づけることを意味しています。こうして記憶された情報はある種の「経験」として蓄積され、日頃から危険回避策を意識した行動を取るためのトリガーとなります。

最近の研究によると、ネズミはネコの気配を感じとるとそれまでの経験値により明らかに違うパターンの行動をとることが報告されています。

経験の浅いネズミはネコの気配に驚き、対処方法がわからぬままその場にすくんでしまいますが、経験を積んだネズミは、ネコの気配を感じととるやいなや最も安全なルートを探して逃げ出すことができるようになるとのことです。両者の行動の違いは、それまでの経験の蓄積の差によるものです。

こういったことは普段の人間社会、労働現場にも当てはまります。危険体感研修による記憶はヒトの脳の中で、視覚、聴覚、触覚などの統合した情報(疑似経験の核)となり、労働現場において普段からどのような行動が最も安全かつ適切かという思考習慣を育てます。また、こうして生まれた思考習慣はその後、危険を事前に察知したり、能動的に回避したりする思考習慣へと発展していくことが期待できるようになります。